ARTISTS’ FAIR KYOTO

世界中のアートフェアが整えられた空間構成やビジュアルでの世界観構築を行っているのに対し、私たちは京都が持つ もう一つの側面 「混沌」を一つのモチーフとし、アーティストが持つ力強い表現のベクトルを「逆行」ととらえ全体のアートディレクションを実施しました。

アーティストは自らが表現すべきことを自らの視点と技法でもって、作品として世の中に投げかけます。それと同様に今回のアートディレクションも限りなく、キーワードとなる言葉を削ることでデザイナーが考える「混沌や逆行」というものを表現していただきました。

ロゴは血管を逆流する現象をモチーフにメイン会場のロゴとサテライト会場のロゴを制作しました。2023年時点では、もうなくなってしまいましたが、サテライト会場にも特別な名前が付けられており、アーティストフェア京都「BLOWBALL/ブローボール(タンポポの綿毛)」という名前をつけました。サテライト会場となるとどうしてもメイン会場のサブとしての扱いになりがちですが、どちらも主役級に面白い展示が展開されていくため サテライトという名前の付け方を避けたかった理由があります。

ポスターや封筒フライヤー、VIPカード、会場サイン、各種告知ツールは、などすべてツールは、私たちのディレクションのもと制作が行われました。一見カオスなアートディレクションですが、空間全体をカオスで満たすことにより、そこに新たなリズム/規律が生まれます。通常、混沌とした デザインでは、会場のイニシアチブをとることは難しいと想定されがちですが、計画された混沌は新しいリズムを生み出します。

空間設計は、ドットアーキテクツが担当し、この混沌を表現する素晴らしい空間設計を実現していただきました。才能あふれるアーティストが多く集まることで自然と展示作品の点数も増えていきました。そこで起きた問題が「展示壁面が足りない」という状況。この課題に対しとったドットアーキテクツは、工事現場の足場を空間内に設置することで既存空間の中に新たな空間と壁面を立ち上げました。

通常、美術館では作品に対して一定の距離を取るような設計を行ないます。しかし この空間では作品との距離が美術館ではありえないほどの近さで閲覧することができます。隣では作品を購入する人が当たり前のようにいて、 その購買者の熱狂が空間全体に広がっていきました。全体のアートディレクションと空間設計が、混沌とした調和を生み出し、今までに見たことのない熱狂を生み出すことができました。